2013年10月25日金曜日

台湾のビルをロマンティックに飾る鳥籠窓、の悲しき実情

 初めての台湾旅行、空港着いてガイドさん付きタクシーでホテルまで向かってチェックインして荷物置いて銀行行って両替してセブンイレブンで傘買って帰ってきたあとで、台北駅に出かけるべくホテルの前から乗ったタクシーをホテル最寄りのMRT雙連駅で降りた時、それは目に飛び込んできた。

 駅前に聳え立つ、極普通のビル。日本のどこにでも普通にありそうな十数階建てくらいの雑居ビル。だが、そのビルの四方の窓、そのことごとくに銀色の、鳥籠のような金属格子が取り付けられているのだ。

 チャボやウサギが飼われているケージを真っ二つに割って取り付けたような立体的な金属格子。ヨーロッパの窓辺のように底部には植木鉢やプランターが並べられていたりする。よく見るとデザインもちょっとずつ違っていたりする。

 ラプンツェルが幽閉されている窓辺が無数に並んでいるような、思わず何らかのドラマを想起せずにいられないようなそんな窓が、何の変哲もない雑居ビルにびっしりと装着されているというこのギャップ。いったいなんだ、これは??

 そして、よく見れば、ホテルの傍にもその窓は装着されている。すぐ裏のマンション、近所のビル、ご飯を食べた店の上。

 同じ建物に装着されていても、デザインは統一されていない。これだけ見ていると、好みのタイプもできてくる。私はこっちのデザインが好きだ。ここの繊細さがたまらない。でもあっちのシンプルイズザベストみたいなのも捨てがたい、などなど。

 翌日、ガイドさん付きのタクシーで朝も早から金瓜石へと走る途中、これがなんなのかはわかった。なんと、泥棒避けだった!!

 さすがは雑技団な中華四千年というべきか、台湾の泥棒は屋上からぶら下がってくるそうな。スパイダーマンみたいな強盗である。そのスキルがあるならなんかもうちょっとほかのことに、盗みは盗みでもミッションインポッシブルなこととかに、使えばいいんじゃないかと思うのだが、なんて才能の無駄遣いだ。

 そして、この泥棒避けを付けていないと容赦なくこの泥ちゃんが入ってくるそうだ。金銭を奪うのみならず、冷蔵庫の西瓜まで食べていってしまうらしい(先日しゃべった社長さんの実体験)。さすが自来也発祥の民族だ!

 というわけで、台湾住宅には基本、容赦なくこの泥棒避けが装着されている。ちょっと前の家だとペンキ塗装した針金であまり立体的でないのが付いているのでなんか昔の刑務所とかを連想したりしてしまう。思わず取り縋って「俺は無実だー」と主張したくなるような感じと言うか。

 しかし、この鳥籠窓は、話が別だ。

 部屋によってデザインが違うということは、例えばホームセンター(台湾にもあるよ!)とかで売っていたりするのだろうか。新しく家を買った家族がどれにしようかと相談しながら購入し、日曜日にお父さんが頑張って装着したりするのだろうか。中学生くらいのときにひたすらロマンティックなデザインのものを購入してしまった女の子が十年くらい経って好みが変わって、シンプルなデザインのものに買い換えてみたり、その子が独立してしまったあとで、年老いた両親が少し錆が浮いてきたかわいい窓の中でお尻をぽりぽり掻きながら暮らしていたりするのだろうか。

 ニューヨークのドキュメンタリーなんか見ていてビルの非常階段が映るとウエストサイドストーリーを思い出すように、鳥籠窓もなんとなくドラマを思い浮かべさせる。たとえ中に住んでいるのが定年間近のおっさんだとしても、外から見る分にはどの窓の中にも美少女が住んでいるような気がしてしまう。それが鳥籠窓。

 せっかくだからそんな映画を何か撮ればいいと思うのだが、台湾人的にはこの窓はあまりロマンティックでないらしい。そもそも鳥籠窓といっても、それはなんのこと? という反応なのだ。そして、あんなものに憧れるなんて、日本人は面白いね、となってしまう。つけずに済むならそれに越したことはない、そういう存在らしい。ありゃりゃ。

 それでも、少しずつ台湾人にもこの窓にロマンを見出す人が出てきてるんじゃないかなという気がする。高雄の博物館で開催されていた若手作家による現代美術工芸品に、この窓をモチーフにした指輪が出展されていたからだ。突起物が多いので私の装飾品の好みからはちょっと外れているのだが、それでもモチーフがこの窓というだけでなんだかにまにましてしまった。

 いつか、というか計画ではあと六年以内に、台湾で暮らす時、住んでみたい家の筆頭が、この鳥籠窓の付いた家である。




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