2017年1月16日月曜日

台湾映画「太陽の子」、の字幕翻訳。

年が変わるので手帳の整理をしていたら、色々仕事のスケジュールやら経過がメモられていて結構面白い。スケジュールが割と立て込んでくるようになったので(ついでに私の記憶力がパンク状態になってきたので)、去年からスケジュール手帖必携にしています。

で、見てみると映画「太陽の子」字幕翻訳のきっかけになった台湾映画「Orzボーイズ」の上映会が3月18日。で、野嶋さんとの初打ち合わせが4月の9日、で字幕入稿締め切りが30日、最終完了が5月の31日、でもって台湾文化センターでの初の上映会が6月24日、と。随分な駆け足でした。

そもそものきっかけは虎ノ門の台湾文化センターで行われた台湾映画「Orzボーイズ」の上映会。解説員として野嶋さんが来場し、上映後にトークもあるよ、ということで申し込んで(作品自体は見るのは二度目)、床がフラットな会場なので遅く入場して後ろの列になると見難かった(なので前回は結局立って見ていた)教訓を生かして早めに会場へ向かい、割と真ん中の最前列に陣取った、のが今にして思えばラッキーでした。

「Orzボーイズ」は残念ながら日本では映画祭上映のみの作品ですが、民主化後の台湾を子供の視点から、それも大人の目から見ればたぶんこういうことかな、というのを完全に子供目線で描いているのがすごい作品です。台湾文化センターに行くと視聴覚コーナーでDVDが見られます。字幕付きですが、台湾文化部が映画製作会社に予算を出して各国語字幕を作らせる、という方式のため、まあ当然ですが映画製作会社側は翻訳者に払う料金をケチり、もとい、節約し、日本語ネイティブではない翻訳者にしかもどうやらグループ作成で発注しているため、シーンによってクオリティがばらばらで言葉遣いも些か不自然というかなり残念な日本語字幕になっています。ただ話が非常に面白いのである程度は気にならなくなるというか、そんな残念な日本語字幕でも映画としてちゃんとラストまで見られる面白さです。

で、上映終了後に解説と質問コーナーがあり、更にお勧め台湾映画の予告編上映会、があった(台湾映画は割と予告編を公式にyoutubeなどにアップしています)。そこで一番のお勧めとしてトリを飾ったのが「太陽の子」でした。

台北で出稼ぎ中の母と、田舎でその帰りを待つ子供。台湾原住民の一家ではよくある光景。のどかな田舎の暮らし。でもそこでは生活が成り立たないから都市部へ働きに行かざるを得ない。荒れ果てた田んぼにホテルを作ろうと不動産屋が持ちかけ、村の大人たちは紛糾するも、母の帰りを待つしかない子供達には母の仕事先にもなりえるホテルの建設はとてもいい計画に思える。
田舎で生活するために、母親は有機農法での米作り復活を計画し、村人もようやく一致団結して動き出す。しかし今度は稲が実った田んぼに工事の手が!

台湾の原住民だけでなく、台湾のどこでも、日本でだって、中国大陸でだって、世界のどこでだって他人事ではない話だと、そう思った。たくさんの人に見てほしくなった。そしてなんといっても一つの台詞が、もう私の中で日本語になっていた。

というわけで、トークショー終了と同時に立ち上がって名刺を渡しに行きました!翻訳してくれる人を探している、というのはトークショーの中で言及されていたので、やりたいです!と伝え、連絡先を頂き、さらに翌日にはトライアル代わりにと予告編の対訳を勝手に送りつけましたよ!(笑)

この予告編対訳は今にしてみれば、どころか、映画本編のディスクを渡していただき作業に入った直後から誤解釈だらけなのに気付いて赤くなったり青くなったりなシロモノ。回想だと思ったのが現在進行中の状況だったり、おばあさんだと思ったのがおじいさんだったり(声だけだと結構わからないものです)。それでも最終的にやらせてもらえてしまったんですから、ありがたいことこの上もなしです。

さて、「太陽の子」は2015年公開の台湾映画。
冒頭に2014年のひまわり学生運動の最終日の光景(携帯画面をみんなで振る光のビッグウェーブ)が映っていることからもわかる通り、ほぼリアルタイムの台湾です。訳すにあたってタイムラインを作成してみたら、2014年4月に始まって2015年の7月末で終わっている感じなので、台湾での公開時はほんとうに、数か月前までの出来事を振り返るような上映だったことになります。

舞台は花蓮。台湾の東海岸(明代などの中国からの台湾への入植は大陸に近い西海岸から始まったため、今でも台湾の西海岸は大都市(日本でいう政令指定都市)が集まり、逆に東海岸にはそう言った都市が一つもない)の、それもかなり過疎な地域です。
自然はとても美しく、海に潜れば大きな伊勢海老が、山に登れば山菜が、という豊かな環境の中で子供たちが駆けまわる光景(時期はちょうど夏休み)は、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の「冬冬の夏休み」辺りを思い出させるのですが、あまり仕事がないため両親が祖父母の下に子供を残して都市部へ働きに行ってしまうというシビアな側面もあります。
そしてこの村の住民たちは台湾の原住民族(台湾には漢民族の他に、漢民族入植以前から台湾に暮らしていた様々な原住民族がいる)の一つ、アミ族なのですが、漁業農業を中心とした生活の一部だったはずの歌や踊りといったその独自の文化は、観光客相手のお小遣い稼ぎとしてのいい加減なパフォーマンス程度になってしまっています。

そんな村にヒロインのパナイが帰ってきます。訛りのない北京語を操り、村を出て都市部の大学に進学し、都市部で就職し結婚したパナイ。夫が交通事故死した後は二人の子供を花蓮の実家に預け、一人で台北でジャーナリストとして働いて実家に送金しています。しかし実家の父が倒れたことで急ぎ花蓮に戻ってきた彼女は、子供たちの寂しさを知り、台北には戻らず花蓮で暮らすことを決意します。

花蓮で、この農村で自分ができる仕事は何なのか? 彼女が辿り着いたのは、先祖代々の棚田を甦らせ、伝統の有機農法で米作りをするという結論でした。そして彼女を中心に、村人たちはアミ族の誇りを取り戻していきます。酒を飲みながら虚しく歌われていた歌が生き生きと歌われ、観光客に見せるのではなく踊りが躍られる、そんな村が甦っていきます。

字幕を作る過程で、何度も何度もこの映画を見ました。その度に新しい発見がありました。その気付いたことを字幕に入れてみたり、やはりまた外して観客の解釈にゆだねてみたり。

そして映画字幕は小説や漫画の訳とは違うんだと、そして吹き替え訳とも違うんだと途中で気付けたのもいい経験になりました。

台湾映画「太陽の子」。
まだ配給先は決まらず、各地の映画祭や台湾関連イベント、映画イベントなどでの上映会でほそぼそと上映中です。なのでまだ私にも翻訳代は入ってきていません(笑)。

字幕の権利を有償譲渡する方法もあったのですが、本格的に上映が決まったならまた手直しを加えたいこと、そしてなんといっても現段階ではまだ曲の著作権までは得られていないために字幕は加えられないままになっている主題歌などの歌の歌詞も訳したいことから、最後まで権利はがっちり抱き締めておくことにしました。

そんな私が歌詞も全部訳せるよう、早く配給先が決まってほしいです。

上映会で「太陽の子」を見た方々が感想をブログなどで発信し、それを読んだ方々が「自分達も見たいな」と希望をまた発信し。それがいずれロードショー公開に繋がるはずです。是非情報発信をよろしくお願いします。




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